演者の症例(五十音順)


北田 志郎先生の症例

椋梨 兼彰先生の症例

劉 園英先生の症例


北田 志郎先生の症例


精神科領域における痰をめぐって

‐主にもう石(もう :「石」へんに「蒙」)の使用経験から‐

後藤学園附属入新井クリニック/下田医院 北田志郎

【 発表要旨 】

「百病皆因痰作崇」の言葉のように、痰を主要な病理となす疾患・病態は数多い。しかしながら病状が複雑化し、長年にわたる場合のそれは頑痰・老痰と呼ばれ、一般的に流通している化痰薬では歯が立たないことがしばしばである。演者は精神科領域の疾患にこの頑痰が少なからず関わっていることを痛感しているが、その中でもう石(もう :「石」へんに「蒙」)を用いることで快方に向かった症例を何例か経験してきた。ただしまだその経験は浅く、かつその安全性・長期連用の可否の問題を解決しえていない。広く御参加の諸賢のお教えを乞うものである。

【 症 例 1】

患 者 : 男性、56歳

現病歴

X年7月に、職場内での「いじめ」を機に躁状態を発症。某病院の精神科を受診。その後も躁と鬱の波を何度も繰り返し、躁鬱病の診断を受けている。X+1年5月、かかりつけ鍼灸師の紹介で演者の外来を受診。

現在ドグマチール100mg、リタリン20mg、コンスタン0.8mgを服用中。
気管支喘息にてフルタイドを吸入、前立腺肥大でバップフォーを内服している。

現 症

170cm78kg。赤ら顔。

現在はうつ状態で抑うつ気分、不安、意欲減退があり、決断ができない。睡眠は入眠困難感が強い。食思は比較的保たれているが、口渇が強い。大便は3日に1回、軟便不爽。小便は残尿感強く、夜間排尿1回。色は自覚なし。

性的能力の減退。肩こり。

脈沈滑尺弱。舌暗紅紫、裂紋尖部に少量、苔黄厚膩。

腹部心下から脇部の痞え感著明。冷感、停水なし。


【 症 例 1】

患 者 : 女性、30歳

現病歴

Y年暴行未遂事件に遭って以来、不眠、音への過敏が持続。

Y+2年就職するが過労にて退社。この間複数の精神科医療機関へ受診歴あるがいずれも長続きせず、鍼灸治療を受けつつ転地療養していた時がもっとも落ち着いていた。

Y+6年に入って人との接触が増えると共に易疲労、倦怠感、時に意識消失が出現するようになり、Y+7年演者の外来を受診。

アトピー性皮膚炎既往があり、現在も残存するが薬は使わない。

現 症

170cm60kg。顔色ややどす黒い感じ。

体と頭(前頭から頭頂)が重だるく、気力、集中力がない。手がうまく動かない感じがする。口をきくのも億劫。めまい感。熟眠感なし。飲食物の味がせず食思はないが無理して食べ、またたくさん飲んでしまう。

大便軟不爽。小便残尿感あり。月経29日周期でほぼ整。月経の前に気分不快が強くなる。月経痛(経中)、経血塊、経前乳脹あり。

手掌がほてる。筋肉が痩せてきた。

脈右沈細関濡、左細滑弦。舌胖大歯痕、暗紅、右辺部に大きなお斑、尖部芒刺、苔黄厚膩、唇_。腹部心下、臍下、右小腹に圧痛あり。冷感、停水なし。


椋梨 兼彰先生の症例


【 症 例 1 】

患 者 : 女性 89歳

主 訴 : 口腔乾燥による義歯の痛み

上顎総義歯、下顎右7番のみ残存している。以前より唾液の減少があったがそのまま放置。最近特に口腔乾燥症状が強くなり、義歯の痛みがひどく来院。義歯の適合状態良好だが、ほとんど唾液が出ていない状態。

問 診

日中によく眠くなる
夜は寝つきが悪い
手足がよく冷える
口の中が乾く
水分をほしがる
耳が聞こえにくくなった
耳鳴りがする
目が乾いた感じがする
目がしょぼつく
まぶしく感じる
唾液が少ない
口が苦い
口がねばる
舌の先がしみて痛む

現在常用している薬 : 胃腸薬、便秘薬、抗精神薬

舌 診:


【 症 例 2 】

患 者 : 男性 69歳

主 訴 : 左側頭部の電撃痛

約10年前左側顔面部に帯状疱疹を発症その後、左側側頭部、舌左側部にピリピリ感が残り、年間数回激しい電撃痛を伴うようになった。東京医科歯科大学にて、帯状疱疹後ヘルペスウイルスによる三叉神経痛診断された。投薬療法、神経ブロックなどを行なったが、効奏せず。4年前当医院来院、漢方薬治療を開始した。

問 診 : 初診時

疲れやすい
元気が無い
日中によく眠くなる
のぼせる
寝汗をかく
汗をかきやすい
夜、小便によく行く
目がしょぼつく
大便は硬い
口が苦い
口が粘る
口の中が渇く
舌の先がしみて痛む
肩こりがする
しみが多くなった
甘いものが好き
風邪をひきやすく治りにくい

舌 診:


【 症 例 3 】

患 者 : 女性 38歳 主婦

主 訴 : 息が臭うように感じる。

数年前より体が疲れると感じてきた。体の疲れとともに食欲も減退、胃もたれ感じるようになり、胃薬を内服するも効果が見られなかった。最近、知人や家族に「息が臭う」「口臭がする」「歯周病じゃないか?」と指摘され当院来院。

問 診

疲れやすい、元気がない
午前中ぼんやりしている、日中によく眠くなる
足、腹が冷える
水分をほしがる、甘いものが好き
食欲がない、小食である
便秘がちである
げっぷがよくでる
口臭がする、口が粘る

現在常用している薬 : ビタミンC


劉 園英先生の症例


【 発表要旨 】

大学の中医薬教育現場と中医研究会の症例検討などで活躍されている劉園英先生より臨床症例を提示し,参会者の皆様と一緒にその弁証と治療を検討して頂きます。


【 症 例 】

患 者 : Oさん、男性、38歳

職 業 : 造園士

初診日 : 平成14年3月28日

主 訴 : 頭痛

経 過

10年前からの頭痛もち、鎮痛剤は効果があるが、再発を抑制できないので来院。

頭痛は左側に突発性の激痛で、痛みは左耳の後ろから左側の頸項部につながる。不安な感情や精神的なストレスにより痛みが強くなる。風に当たって発作したことがあったので、いつも帽子をかぶっている。市販のバファリン、アスピリンなどの鎮痛剤を服用している。

三ヶ月前の転職をきっかけとして頭痛の回数が増えた。特に夕方から頭痛が増悪し、市販の痛み止め薬の鎮痛効果は2時間しか続かなかったため、薬の飲む回数と量を増量している。夜中激しい頭痛で目がさめたこともある。仕事の疲れやストレスにより頭痛は耐えられないほどの激痛が5日間継続していた。

キンキンとした感じの喋り方で、眉にしわを寄せている。

煩躁、いらいら、怒りっぽい、不眠。他院で精査したことがあったが、特に異常はなかった。

望 診

苦痛顔貌、顔色暗黒。長身のやや痩せ型の人。

問 診

5日間継続左頭部の激痛がある。痛みは激しく左耳の後ろから左側の頸項部につながる。昼間は鎮痛剤で耐えられるが、夕方になるといっそうひどくなる。たまに軟便か下痢をする。

脈 診 : 緊、弦

舌 診 : 薄白微黄苔、舌質淡・青紫